更なる層間評価試験に向けて
小型高圧トランスの用途はますます広がり続けています。
そんな中で、コイルの品質においては全数試験という厳しい
条件の中で、今の試験方法が最も的確な試験方法であるの
か危惧の念を持ちながら生産を続行するという状況にあります。
そんな中で小社は試験機メーカーとして理論的にも実施面でも
合否判定確度100%を目指してお客様へ提案し、実機を納入
してきました。
既にこのホームページの「高圧トランスの試験」のページで報告
しています、コアを飽和させないで高圧共振環境を整えること、
そしてこの共振の電流波形を試験機に取り込み、この波形に含
まれるコロナ成分を抽出してコイルの層間耐力を評価する。と
いう方法です。この評価法は多数のモデルのトランスにおいて
有効に働いていて実績を積んでいます。
このページでは、この有効な試験方法を大量生産するトランス
などのバラツキを踏まえて合否判定の余裕度をチャートを使って
確認する方法を紹介します。
サンプル種類/共振電圧(kV) | 1.0 | 1.2 | 1.4 | 1.6 | 1.8 | 2.0 | 2.2 | 2.4 | 2.6 | 2.8 | 3.0 |
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良品1 正常巻線 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.03 | 0.05 | 0.3 | 0.45 |
良品2 正常巻線 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.03 | 0.05 | 0.3 | 0.45 |
良品3 正常巻線 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.04 | 0.05 | 0.07 | 0.40 |
良品4 正常巻線 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.02 | 0.03 | 0.06 | 0.45 | |
不良1 2次巻線内にセクション渡りあり | 0.02 | 0.02 | 0.1 | 0.18 | 0.23 | 0.24 | 0.26 | 0.3 | 0.40 | ||
不良2 2次巻線内にセクション渡りあり | 0.02 | 0.03 | 0.1 | 0.12 | 0.2 | 0.23 | 0.3 | 0.40 | |||
不良3 1-2次巻線間にセクション渡り | 0.02 | 0.03 | 0.11 | 0.14 | 0.22 | 0.26 | 0.31 | 0.42 | |||
不良4 1-2次巻線間にセクション渡り | 0.03 | 0.04 | 0.13 | 0.2 | 0.35 | 0.45 |
巻線の品質サンプルによる共振電圧対測定コロナ電流 一覧 (コロナ電流単位:×0.005A) |
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下の測定値表とグラフは共振電圧対コイルが発生するコロナ電流
の測定値とそのグラフです。良品4個と不良品4個の比較です。
共振電圧を上げて行きますと発生するコロナ電流はそれぞれの
コイル内の欠陥に応じて独特の発生パターンを示します。
不良品は欠陥の度合いによってコロナの発生し始める共振電圧に
かなりのバラツキを生じます。従って欠陥の種類や程度のバラツキ
を全て反映させるためには出来るだけ多いサンプルが望ましいです
し、良品であっても設計上の問題があって巻線を正常にしても、時
に不良が発生する場合には特に多くのサンプルを必要とします。
このグラフで特徴的なのは良品のグループと不良品のグループと
の差が一見して解る特性を示していることです。
グラフ中「X」印の共振電圧とコロナ電流を読取りこの値を試験器
に設定します。このグラフの例では、共振電圧=2.1kV コロナの
上限値=0.12となります。この条件を設定することにより2.1kVの
共振で0.12以上のコロナを発生するコイルはコロナ不良として
判定されることになります。
小社ではこの試験方式が最も優れたコイル層間の評価方法として
自信を持ってお勧めしています。
この試験方式を元に「電流波形上のコロナ検出」、「電流波形の位相によるレイアーショートの評価」を
テーマとした特許を申請中です。