この写真はコピー機などに使われている高電圧電源用のトランスの
一つです。高電圧を発生するために、細い銅線を多数巻き、コイルを
形成しています。一辺が24mmの小型トランスですが3〜4kV発生し
ます。

カットされて断面が見える銅線は薄い皮膜でコーティングされ、10000
〜15000回巻かれています。この巻き重なった部分の皮膜が破れて
一ターン分でも接触しますとレアーショート(Layer Short)となって、
ショートした部分に大電流が流れます。

一旦この現象が起きますと、大抵の場合発熱によって周囲の皮膜も
炭化します。この結果ショート部分がさらに広がって発煙現象まで拡
大し、電源ダウンという結果になります。

インパルス試験はこのようなレアーショートしたコイル、あるいはレア
ーショートの可能性を持ったコイルを試験して、製品として使われる
前にチェックする試験方式です。

         

試験は非常に幅の狭い高電圧のパルスを上図のコイルの両端に印加
します。下図のような高電圧、高周波数の共振波形がコイルの両端に
発生します。試験電圧はコイルの実際の使用電圧の2倍〜10倍位の電
圧で、コイルの使用環境によって選びます。
共振電圧波形はコイル内の欠陥により変化を受けます。この変化の
様子を分析することによって、今コイル内にどんな欠陥が潜んでいる
のか診断できるのです。
波形を見て左の正常品と右の軽微な1Tレアーショートの差は判定できますか?
コイルテスタではこの減衰比を数値で表示します。図の例では正常品で17%、1Tレアーショートで25%という数値になって測定されます。これで確実な合否判定ができるのです。
インパルス試験の波形  1mH  空芯コイルの例
上図のコロナ発生のレベルは減衰
振動波に対して1/2にも達し、波形
でも確認できる程ですが、コイルテ
スタではこの1/50程度まで検出能力
があり、わずかなコロナも見逃しません。
巻線の層間でコロナを  
 発生 している場合
拡大
1Tレアーショートの場合  
 正常品

印加パルス

パルス幅=1.1uS
電圧=3.3kVの例